冬のパン作りの悩みといえば、発酵に時間がかかることではないでしょうか。
それもそのはず。
寒い部屋で冷たい水で仕込んだ生地は、ものすご~~く冷たくなっているからです。
冷たい生地だと、イーストがなかなか活性化してくれないから発酵が進みません。
発酵に時間がかかりすぎてしまうことが続いているなら、「こね上げ温度」に注意してみてはいかがでしょうか。
パン作りでは、こね上げたときの生地温度(こね上げ温度)がとても大切だと言われています。
辻調の講習会では業務用ミキサーでこねた後、必ずこね上げ温度を測ります。
しかも設定したこね上げ温度にほぼぴったりに仕上がっています。
ツォップの講習会は手で生地をこねますが、半分までこねたときの生地温、こね上げたときの生地温、ベンチタイム、、、とにかくすべての工程で毎回温度を測るように指導されます。
それだけこね上げ温度はパン作りにおいては大事だということですね。
では、目指すこね上げ温度にするにはどうしたら良いでしょう?
こね上げ温度の計算方法
こね上げ温度を算出する計算式は下記になります。
室温と粉温と水温の平均を出して、それにこねている時の温度変化が加える(差し引く)とこね上げ温度になる、ということですね。
家庭だと、手ごねでもニーダーを使おうと冬は室温と粉温と水温の平均より下がることが多く、夏は上がることが多いように思います。
ただし手ごねの場合、手が温かい人は冬でもこね上げ温度は室温と粉温と水温の平均よりあがる傾向がありますので、こればかりは○○度とは言えません。ご自身でデータを集めるのが良いかと思います。
では、私の場合はどうでしょうか?
こね上げ温度が大切だとは知りつつも、アバウトな私は普段はわざわざ計算することなく、寒い日は30度以上の水で仕込むぐらいしかしていなかったので、今日はきちんと測ってみました。
<温度データ>
室温・・・20度
粉温・・・19度
設定こね上げ温度・・・27度
こねている時の温度変化(ニーダー使用)・・・不明だけど下がるはず
上記から水温を計算します。
水温は45度までが限度なので、ニーダーでこねると温度が下がるのは分かっていますが±0度だと仮定しました。
水温42度と言っても、これに卵とバターが少しですが入るので温度降下は必至です(^_^;)
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30分ぐらいこねました。
案の定、生地温度は設定したこね上げ温度よりかなり下がり「22度」という結果に。
副材料の温度は無視するとして、今日の「こね上げ時の温度変化は-5度」だと分かりました。
もう一度、こねているときの温度変化をあてはめて水温を算出してみます。
↓
水温=57度
水温57度にしたら、イーストは死滅寸前です。
これはいけない!
ではこれからどうしましょう?
調整できるのは室温と粉温ですね。
・暖房をつけて室温をあげる。
・粉温をあげる。
室温は20度ですが、我が家は日当たりがとてもいいのでわざわざ暖房をつける気にはなれません(^_^;)
ということは、残るは粉温を上げるしかないですね。
試したことはないのですが、小麦粉を袋に入れてお湯に浸ける手があるそうですので、次回は試してみたいと思います。
こね上げ温度が低いときの発酵について
さて、設定したこね上げ温度より5度も低くなってしまった生地。
イースト多めで1時間以内で発酵を完了させるつもりなら、オーブンの発酵機能で35度にするなど普段より温かい温度で発酵させます。
今回の生地は0.6%のイーストで8時間~10時間後に野菜室で冷蔵発酵を完了させる予定です。
このまま野菜室に入れても予定の時間には発酵完了はしなさそうです。
というのは、20度を下回るとイーストの活動が悪くなるのですが、22度の生地をすぐに野菜室で冷やしてしまったらイーストが活発化する前に生地が20度を下回ってしまうからです。
こういうときは生地を最初に設定した生地温度に近づけてあげます。
生地温だけでなく、生地温を上げている間にどのぐらい生地が膨らんだのか分かるようにマスキングテープで印をつけて30度の発酵器へGO!
1時間半でふっくらしてきました。生地温は26度。
これで野菜室に入れました。
2時間後(こね上げから3時間半)にはさらに膨らんできました。このまま8時間経つまで様子をみます。
もし8時間経過前に完了しそうになってしまいそうになったら冷蔵庫に移したりします。
また、次回は発酵器に入れる時間を短くすると良いというデータも得られます。
こんな感じでデータを記録すると、予定していた通りのスケジュールでパン作りができますね。
発酵に時間がかかりすぎていると感じている方は、一度こね上げ温度に注意してみることをオススメします。
家庭でのパン作りでこね上げ温度は大切か?
散々こね上げ温度について書いてきましたが、最後にもう一度、家庭でのパン作りでこね上げ温度は大切かどうかについて考えてみます。
何度も言いますが、こね上げ温度が違うと発酵時間が変わります。
発酵時間が変わればパンも変わります。
でも、私の教室で作るパンはこね上げ温度が設定と違うからって、そこまで影響するようなパンではないんです。
あまりに生地温が低ければ発酵器の温度を高めに設定すればいいと思います。
(発酵器の温度を決めたり、発酵時間を予想するのにはこね上げ温度を測ることは必要ですけどね。)
もちろん、気泡たっぷりの本格的なバゲットを作りたい、、、とかなると話は別ですが。
アバウトな私が作るパンですから。アバウトでもおいしく作れるパンをお教えしています。
だからといって全部が全部いい加減なのはダメです。
守るところは守る。それはこね上げ完了の生地状態と発酵完了の見極めだと思っています。
ほかのパン教室でコースを修了されたある生徒さんからは
「アトリエ・ド・ギャミーヌに通うようになってから、前の教室で習ったパンもおいしくできるようになりました」
という感想をいただいています。
こね上げ完了の生地状態と発酵完了の見極めができるようになれば、それだけでいつも作っていたパンがもっとおいしくできるようになるのです。
もちろんこね上げ温度を設定通りにするために温度管理を確実にすればよりおいしいパンになるかもしれません。
でも、家庭でのパン作りが億劫になってしまっては残念です。
だって、家庭でのパン作りは本来楽しいものですからね。
結論。
こね上げ温度は大切です。
が、こだわりすぎてパン作りが面倒になってしまうぐらいならアバウトでいいと思います!
プロの方に聞かれたら怒られそうですけどね(^_^;)