ホシノ天然酵母とインスタントドライイーストを使い分ける:パン作りの微調整ポイント

先日のオンラインレッスンで、ホシノ天然酵母の種起こしが間に合わなかったため、インスタントドライイーストを使ってご参加された生徒さんがいらっしゃいました。

私のオンラインレッスンでは、レッスン初日に生地をこねて仕込み、一晩かけて一次発酵を行います。2日目には、発酵が完了した生地を分割し、成形、焼き上げまでの工程を進めます。

今回は、インスタントドライイーストを使用する際も、長時間発酵に適した量を仕込んでいただきました。ちなみに、この生徒さんはインスタントドライイーストを使った長時間発酵パンに詳しい先生でもあり、ご自身で分量を調整されました。

ホシノ天然酵母↔インスタントドライイーストへの変換についてはこちら

レッスン後、その生徒さんからいただいた少しマニアックなご質問が、私自身も改めて考えるきっかけとなりました。せっかくなので、ここで少しシェアさせていただきますね^^

ライ麦粉とココアのクグロフの製作での気づき

この日作ったのはライ麦粉とココアを配合したクグロフです。しっとり感を狙ってライ麦粉を使用し、バターをできるだけ控えつつ柔らかさを出すためにプルーンピューレを加えました。

配合そのものが少しユニークなのですが、レッスン後、生徒さんからこんな質問をいただきました。

「今日の生地はずしっとしていたのですが、ライ麦粉のせいですか?」

ライ麦粉はパン生地の水分を保持する性質があるため、焼き上がりがしっとりと仕上がります。一方で、ライ麦粉はグルテンを生成しないため、生徒さんは「生地が重く感じたのはライ麦粉の影響では?」と推測されていました。

確かに、私がホシノ天然酵母で作った生地も、こねているときにはずしっとした感触がありました。しかし、焼き上がりにはその印象はありませんでした。一方、生徒さんのインスタントドライイーストを使ったクグロフは、焼き上がりでも少し重たさを感じたそうです。膨らみは良かったものの、ライ麦粉を抜けばもっとふわっとした仕上がりになったのでしょうか…。

また、こねているときの感触にも違いがありました。ホシノ天然酵母を使った生地はべたつきが強く、まとまりにくい一方で、インスタントドライイーストの生地はべたつきが少なく感じられたそうです。この違いに注目し、双方の酵母に含まれる成分について2人で考察しました。(お互い講師なので、会話がいつもマニアックなんです(笑))

ホシノ天然酵母とインスタントドライイーストの特性

ホシノ天然酵母とインスタントドライイーストには、それぞれ特有の成分が含まれています。この成分が生地の性質や仕上がりに影響を与えると考えられます。

インスタントドライイーストに含まれるビタミンC

インスタントドライイーストには「ビタミンC」が添加されています。ビタミンCはパン生地の弾性を高める効果があり、こねている最中のべたつきが減り、発酵後もダレにくく張りのある生地になります。この点が、生徒さんの「べたつきが少ない」という感想につながったのだと思います。

ホシノ天然酵母に含まれる麹

一方、ホシノ天然酵母には「」が含まれています。麹はでんぷんを糖に、タンパク質をアミノ酸に分解する酵素を持ちます。この働きにより、生地がダレやすくなる反面、甘みや旨味が増します。シンプルな配合でもおいしいパンが焼き上がるのは、この特性のおかげです

今回のクグロフでは、ホシノ天然酵母を使った場合、生地がダレて作りにくくならないように水分は少なめに調整していたため、こねているときに重たく感じられたのだと思います。それでも、焼き上がりはしっとり柔らかく仕上がりました。これが麹の力によるものかと感じています。

インスタントドライイーストには麹が含まれていないため、ホシノ天然酵母の生種に含まれる水分を単純に増やすだけでは生地が十分やわらかくならなかったのかもしれません。

もしインスタントドライイーストを使用するなら、麹の影響を補うためにもっと水分量を増やすことが必要だったのでは、と考えています。ビタミンCの影響を考慮すれば、水分を増やすことは可能だと思いますしね。このような微調整が、最適な生地作りにつながるポイントかもしれませんね。

レシピ変換のポイント

ホシノ天然酵母↔インスタントドライイーストのレシピ変換は、単純に生種の含まれる水分量を考慮した調整だけで可能な場合もあります。しかし、それぞれの酵母が持つ特性を理解した上で、作りたいパンの性質に合った配合を考えることが重要です。

例えば、インスタントドライイーストの生地でべたつきが少なかった場合、今回のクグロフでは水分量をもう少し増やしても良かったかもしれません。それぞれの酵母を最大限活かせるパン作りを目指したいですね。