フランスパンを作るための小麦粉として生まれた日清製粉の「リスドォル」。
この「リスドォル」が今年2019年で50周年を迎えました!おめでとうございます!!!
「日本のフランスパンの歴史はリスドォルとともにある」と言われるほどの小麦粉ですが、
私のパン教室でも国産強力粉「キタノカオリ」と並んでいつも使っているとても重宝な小麦粉です。
こねやすくてどんなパンもおいしく作れるので、私の中では万能選手的な位置にいる小麦粉なんです。
今回はこの「リスドォル」についてご紹介したいと思います。
リスドォルの誕生
50年前、リスドォルは本場フランスの風味を追求したフランスパン専用粉として誕生しました。
当時は白くてキメのそろった、ふわふわで甘いパンがおいしいという、アメリカ経由の価値観がスタンダードだった時代でした。
そういったパンを作るためにはたんぱく量が多くて白い小麦粉を使うわけですが、このような小麦粉では外側がバリッとして不規則な気泡を抱えたフランスパンは作れません。
そこで、フランスパンを作るために開発されたのが「リスドォル」でした。
「フランスと同等の粉」というのが当時の日清製粉に課せられた命題だったそうですが、小麦の仕入れ先はカナダやアメリカだったので、相当の苦労があったみたいです。
また、灰分を高くするので色も灰色っぽくなるのには、かなり抵抗があったとか・・・
そんな苦労の末にできあがった小麦粉の名前「リスドォル(Lys d’or)」は、フランス語で「金のゆり」。
(「lys」は古い綴り方で、現在は「lis」と書きます)
ゆりはフランス王国の紋章に使われていたので、伝統的なフランスパンの味と香りを追求した小麦粉にぴったりの名前です。
リスドォルは「準強力粉」
リスドォルは「準強力粉」に分類されます。
「準強力粉」とは、主にお菓子作りに使われる「薄力粉」と主にパン作りに使われる「強力粉」の中間にあるような小麦粉です。
この分類は小麦粉に含まれるタンパク質の含有量によるもので、タンパク量が少ないのは薄力粉、タンパク量が多いのは強力粉となります。
たんぱく量の違いはグルテンの強さに影響するのですが、準強力粉はその中間にあたるものなので、お菓子作りにもパン作りにも使えるというわけです。
また、準強力粉は強力粉に比べて灰分が多いのも特徴です。
灰分とは、外皮や胚芽部分に多く含まれるミネラル分のことですが、
灰分が多い粉を使用してパンを作ると、比較的小麦の風味の強いパンになると言われています。
だから、パンに使うのならばバゲットやカンパーニュなど、シンプルなハード系に使うと小麦風味がしっかり感じられるんですね。
リスドォルが向いているパンは?
リスドォルはバリッとしたクラスト(外皮)のフランスパンに向いているのはもちろんですが、菓子パンを作ると歯切れがよくてとてもソフトなパンに仕上がるんです。
また、クロワッサンやデニッシュなどのフランスのヴィエノワズリにも向いています。
私の教室ではかなり頻繁にリスドォルを使っているので、いくつかご紹介しますね。
リュスティック
不揃いな気泡がたくさん入ったリュスティック。軽い仕上がりなので、食事の名脇役といった感じです。
たんぱく量が少ないので水をたくさん入れるとゆるゆるのパン生地になってしまうのですが、切りっぱなしでOKなリュスティックなら成形も難しくないのがいいところです。
パン・トラディショネル
砂糖や油脂が入らないシンプルな配合のフランスパンのことを「パン・ドラディショネル」といいますが、同じ生地をバゲットとフーガスに成形してみました。
リスドォルで作るパンの王道ですね。
パン・オ・レ
パン・オ・レにもリスドォルを使っています。
これを強力粉にかえると全然違う食感になるんです。
このパン・オ・レは生クリームやバターをたっぷり使ったリッチなパンですが、こういった甘いパンにもリスドォルは力を発揮します。
軽い口当たりが抜群においしい!これはリスドォルならではですね。
ブレンドにも最適
教室では強力粉としては「キタノカオリ」を使っているのですが、キタノカオリのもちもち感が強すぎるときにはリスドォルをブレンドすることがよくあります。
リスドォルを加えると生地の強さが緩み、ちょうどよくなるのです。
リスドォルは使い方次第でほんとうにいろんなパンが作れますし、プロの手にかかれば「え!これがリスドォル?!」というほどおいしいパンになったりもします。
そんなところから、「遊べる粉」とも言われるそうです。
今年で50周年を迎えた伝統ある「リスドォル」、ぜひ使ってみてくださいね!