パンを作るのに欠かせない「塩」。
健康に考慮すると、塩分はできるだけ控えめがいい。
そう思ってパン作りから塩を省いたらどうなるのでしょう?
実は塩を入れないでパンを作ったことがあります。
正確には塩を入れ忘れたのですが、、、
それはドライフルーツをたっぷり入れたパネトーネを試作したときでした。
ドライフルーツだけでなく、バターも卵黄もたっぷり入れたとてもリッチな生地です。
ふわふわで甘くて何度でも食べたくなる味を頭に思い描いていざ試食!
「あれ?」
なんとも締まりのない味。。。
塩を入れ忘れたことに気付きました。
入れる塩は本当に少量なんです。でも塩がないだけでまったくおいしくない。
このときのパネトーネの場合、ベーカーズパーセントでいうと1.5%。
それでも、あるのと無いのとでは味に大きな違いがでるから塩はパン作りに欠かせないのです。
でも、塩にはパンの味を左右するだけではない役割があるんですよ。
パン作りにおける塩の役割
主な役割は下記の3つになります。
- パンに塩味をつける
- グルテンを引き締める
- 殺菌効果
1.パンに塩味をつける
上にも書きましたが、塩はパンの味をおいしくするのに欠かせません。
塩味がないと無味乾燥とでもいいましょうか。
本当に締まりのないまずいパンになってしまうのです。
塩の量はレシピによってそれぞれですが、プロの方のレシピだと塩が大体2%入っているような印象です。
もちろんパンの種類にもよりますけどね。
一方、私の場合1.7%を基準にしています。
食事パンなら大体1.7%。甘めのパンなら1.5%。水分が多いときは少し増やす。そんな感じです。
家庭で食べるなら、味付けを濃くしてインパクトのあるパンにする必要はないと思っています。
ちなみに、フランスでは国民の塩分摂取量を下げるために「バゲットの塩分は1.8%以下にすること」という協定があり、2018年にはそれを法案化するようにフランス議会に提出されたそうですよ。
2.グルテンを引き締める
塩にはグルテンを引き締める効果があります。
塩を入れないと生地はベタベタし、だら~っとしてきます。
それがよくわかるのが「オートリーズ」をとったあとに塩を添加したときです。
オートリーズとは、塩を入れずに小麦粉と砂糖、水だけで軽くこね、それを15~30分程度休ませることで小麦粉と水を水和させてグルテンを作り、その後で塩を入れてこねるという製法です。
>>オートリーズについてはこちらをご覧下さい
オートリーズ後はだら~っと伸びる生地になっているのですが、ここに塩を加えてこねると一気に生地がぷりっとするんです。
塩による生地の引き締め効果を目の当たりにする瞬間です。
塩が入るから生地に張りが出て作業性も良くなるし、発酵中に発生するガスをしっかり保持してふんわりと膨らむことができるのです。
3.殺菌効果
塩には殺菌作用があります。
塩を入れないからといって、2~3時間で作るパンで発酵中に雑菌がすごく増えてしまうというのは考えにくいですが、長時間発酵させるパンの場合は必要かもしれません。
湯種食パンを作るとき、小麦粉とお湯を練り合わせて「湯種」を作り、それを一晩寝かせるのですが、
このときに塩も加えて練り合わせることがあります。この目的は殺菌です。
ちなみに殺菌力がある塩はイースト(酵母)も弱らせますので、こねるときはイーストに塩が直接つかないようにしてくださいね。
パン作りに適した塩
パン作りには、一般的には焼き塩のようなサラサラした塩が適していると言われています。
塩は空気中の湿気をよく吸収するので、湿気を含んだ塩は重量が増加します。
同じ10gを計量しても乾燥した状態の塩(あら塩など)と焼き塩とでは塩味を決める食塩相当量に違いが生じてくるのです。
例えば、味の素から出ている「瀬戸のほんじお」で食塩相当量を比べてみましょう。
100gあたり
あら塩タイプ・・・88.9g
焼き塩タイプ・・・98.8g
(味の素の公式サイトより)
と約10gもの違いが出てくるのです。
でも、シンプルなパンほど塩にこだわるという方もいらっしゃいますし、ミネラルたっぷりで食塩相当量が少ない塩を使ってみるのもいいですね。
その場合は塩の分量は考慮する必要があるかもしれませんが、お気に入りの塩をぜひ見つけてみてください。
塩の計量について
ところで、塩の分量は0.1g単位で記載されていることがほとんどかと思います。
少なくとも、私のレシピはそうです。
そこで、よくご質問をいただくのが、
「0.1g単位まで正確に計らないとダメですか?」
というもの。
答えは「YES」。はい、正確に計ってください。
お料理をするとき、塩味の最後の調整をするとき、人差し指と親指で塩をつまんで加えますよね。それはほんの少しの量ですが、入れるのと入れないのでは味に違いが出るからそうしているはずです。
パンも同じです。小麦粉量が少ないほど正確に計ってください。
0.1g単位で計れるスケールは、パン作りをするなら必須かと思います^^
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塩を入れないパン「パーネ・トスカーノ」
最後に塩を入れないイタリアのパン「パーネ・トスカーノ」の紹介です。
フィレンツェを中心としたトスカーナ地方の代表的なパンですが、
12世紀に塩の流通が止まり値段が高騰したため、塩を入れずに作ったのが始まりと言われています。
何年か前に辻調の製パン講習会でも実習したのですが、塩を入れた同じような配合のパンに比べて気泡が細かく、大きく膨らみました。
もちろん、味は微妙でしたよ(苦笑)
現地では薄くスライスして生ハムなどをのせたり、塩気の強い煮込み料理と一緒に食べたりするそうです。
以上、今回は塩について書いてみましたが、ご参考になればうれしいです。