教室で使っている「ホシノ天然酵母」は、お米由来の酵母と麹からできています。
インスタントドライイーストとは明らかに違う香り。
酒種酵母に近い感じ。
出来上がったパンは少しもっちりしています。
レーズンなどの果物や小麦粉・ライ麦粉などの穀物で起こすのは手間がかかるし、毎日のお世話も大変ですが、それに比べて「ホシノ天然酵母」は市販の顆粒の酵母種を使って種おこしをするのでとても手軽です。
ホームベーカリーでもホシノ天然酵母パンの自動焼きコースがあるほどです。
香りがよくてもっちりして、そしておいしいパンを手軽に作れるから大好きなホシノ天然酵母ですが、
教室にいらっしゃるほとんどの方が
「自己流でホシノ天然酵母のパンを作ったけどうまくできなかった」
とおっしゃります。
今回はその原因と解決についてご紹介したいと思います。
原因1:種おこしがうまくいっていない
そもそも種おこしがうまくいっていないがために、パン生地が膨らまないということが考えられます。
ホシノ天然酵母のパッケージに記載の作り方にはこう書かれています。
1.パン種に対し、2倍の30度の温水を用意する。
2.温水とパン種を均一に混合するため、先に温水を容器に入れ、あとからパン種を入れてよくかき混ぜる。
3.28度で24時間発酵させ、冷蔵庫(4度)で一晩保管したあと、使用する。
熟成した生だねを使用する際は、よくかき混ぜてから使う。
この作り方を見るだけですと、失敗してしまう落とし穴、書かれていないポイントがいっぱいあるのです。
「1」は問題ないですね。水の温度はきちんと温度計を使って測りましょう。
「2」はどうですか?
「よくかき混ぜる」の度合いは、粉がしっかり水を吸って、ボソボソとしたおから状になるまでです。
「3」は一番曲者です。
「28度で24時間」といいますが、そもそも「28度」に温度管理するのって難しいですよね。
ホームベーカリーの「生種おこし」機能はもしかしたら大丈夫かもしませんが、ここでは器械に頼らないでホシノ天然酵母の発酵状態を見分けるポイントをお伝えしたいと思います。
ホシノ天然酵母は発酵が始まるとプクプクとガスが出て膨らんできます。
酵母が出来上がるころにはプクプクは穏やかになり、おから状だったものがとろっとした液状になります。
高く膨らんでいたかさも、混ぜたときの高さに戻ります。
プクプクと静かにガスは出ていますが、このよう「元の高さに戻れば出来上がり」というのがひとつの目安になります。
写真のようにマスキングテープを貼ると、目で見て確認ができるのでオススメです。
この状態になるまでにかかる時間は、部屋の温度に左右されます。
夏は室温が28度以上のこともありますので、24時間かからずに酵母おこしが完了することもあります。
逆に冬は28度の環境を作るのは難しいので、1日半や2日ぐらいかかることもあります。
多分、失敗の原因はここにあると思います。発酵不足です。種がまだできていないのに24時間たったからという理由で冷蔵庫に入れてしまっているんだと思います。
しっかり状態を見極めてから種おこしは完了してくださいね。
また、温度が低すぎるとまったく種おこしが進まないということもあるかもしれません。
そういうときは、できるだけ温かい状態を作ってみてください。
電気ポットのそばや暖房のきいた部屋で発酵させるのもいいと思います。
温度調整ができるヨーグルトメーカーで種おこしをしている生徒さんもいます。
ホシノ天然酵母起こし器なんていう便利なものも売っています。
酵母おこしは、温度管理をすることがポイントですが、家庭ではなかなか難しいものです。
でも、上記のように時間ではなく酵母の状態でできあがりかどうかをご自分で見分けることができれば、一定温度で保温ができなくても大丈夫です。
これで酵母おこしの失敗については解決できるはずです。
原因2:一次発酵が足りない
生徒さんたちのお話を伺っていると、失敗のほとんどの原因がここにありそうです。
ホームベーカリーの自動コースでの失敗もここだと思います。
ホシノ天然酵母というのは、インスタントドライイーストに比べたらものすごく微量の酵母しか含まれていません。
ですので、一次発酵に時間がかかります。
どのぐらいの温度で何時間、、、とははっきり言えないのですが、25度ぐらいで6~8時間はかかると思います。
冬の寒い日なんかはいつまでたっても膨らんできません。
膨らんでこないから「失敗したんだ」って諦めてしまったという方もいらっしゃいました。
10度以下とかだと、本当にいつまでも発酵してこないこともあるかもしれませんので、せめて15度以上の環境を作ることもは大切かもしれませんね。
でも、ここで言いたいのは、発酵させる温度によって、発酵時間が大幅に変わってくるということなんです。
発酵させる温度だけではありません。
捏ね上げたときの生地温度によっても発酵時間はものすごく変わってきます。
そこでご紹介するのが一次発酵の完了を見分ける方法です。
こねあがった生地を中身が透ける容器にいれます。
ホームベーカリーでこねた場合も必ず容器に移し替えてください。
生地のてっぺんの高さに合わせてマスキングテープをはったり、輪ゴムをかけたりして目印をつけます。
パンの種類にもよりますが、その高さからおよそ2.5倍まで膨らませます。
こんな感じ。
続いて「指穴チェック」や「フィンガーテスト」と呼ばれる方法で確認します。
生地に粉を少しふるか、指に粉をつけて生地に穴を作ります。
その穴がすぐに縮むようなら発酵不足。
穴がそのまま残るなら適正発酵。
穴をあけたら生地がストンと落ちるようなら過発酵です。
レシピに書かれているこねあげ温度、発酵温度、発酵時間に惑わされることなく、「2.5倍まで膨らませる」「指穴テストで確認」の2点をやってみてください。
これで一次発酵不足による失敗は解決すると思います。
原因3:仕上げ発酵が足りない
一次発酵はうまくいっているのに、パンが硬く焼きあがってしまったのなら、仕上げ発酵不足が原因だと考えられます。
仕上げ発酵の見極めというのは、パンの種類によってかなり違ってきますし、ボリュームの好みもありますので難しいものだと思いますが、
これもやはり時間ではなく、生地の状態を確認してから焼成するべきです。
一概には言えませんが、パンの側面をそっと触ってみて、生地がゆっくり戻ってくるぐらいが適正です。
適正状態は知っているけど、冬に「全然膨らんでこない!」とか、「発酵に時間がかかりすぎて生地が弛れてしまった」ということであれば、生地温度に問題があるかもしれません。
冬は室温でオーバーナイト発酵させたり、冷蔵発酵後に生地温度を室温に戻してから分割・丸めを行いますね。
このときの室温が低ければ生地の温度も低いので、成形後も生地の温度は低いままなので、なかなかふんわりと発酵してこないです。
オーブンや発酵器の温度をいつもより高めにするのも手ですが、私は最近、生地を丸めたあと25~27度ぐらいの発酵器でベンチタイムをとっています。
発酵器がなければオーブンの発酵機能で30度でもいいかもしれませんね。
冷たすぎる生地は生地そのものの温度が上がるまでに時間がかかることを知らず、仕上げ発酵を夏と同じ時間だけとっていると不発酵不足で硬いパンにできあがってしまうことがありますから、生地温度にも気を配ってみてくださいね。
そして、発酵完了かどうかはパンの側面をそっと触って、ゆっくり戻ってくるぐらいになっていれば大丈夫。
これでふんわりとしたパンが焼けるはずですよ。
以上ですが、思い当たる原因があれば、ぜひ上記のように酵母や生地の状態を確認してから次の工程に進んでみてください。